11/21(土) pityman「そのゆびにぎって」

王子駅から歩いてすぐの所にあるpit北/区域という劇場に舞台を見に行きました。Pitymanという劇団の「そのゆびにぎって」という作品。

Pityman作品の観劇は3作目。Pityman作品はセリフのないところ、つまり、「間」が雄弁に語る。「間」における役者の表情の変化、視線の移動、手足のちょっとした動き、そして息遣い。「そのゆびにぎって」は自分の観た3作の中では一番難しい作品だった。でも、もう一度観たくなる作品でもあった。以下ではストーリーを追いつつ思ったことを簡単にレビューしていきたいと思う。ぼくの拙い文章でどこまで伝えられるか不明だけど、面白そうと思ったら是非見に行って欲しい。

★★★以下、ネタバレ注意★★★

主人公は30代前半の男性。保育園の園長先生。その彼が男なのに「妊娠する」と決意して、海外へ手術を受けに行くまでの話。ちょっとしたSF要素あり。もう一人の主人公はその男性の妹。物語の半分はこの二人の会話で進む。

彼はなぜその「決意」をしたのか。その「決意」に至ったロジックそのものは直接的には語られない。他の登場人物との会話から、観客に推測させるスタンスなのだと思う。観客に想像の余地を残す物語に深みを与えている。会話からすると、恐らく、子供の頃、妹とともに母親に捨てられた過去(結構残酷)が決意の理由の大半を占めているようだ。そのため自分で責任を持って子供を育てたいというのがその「決意」に繋がったのではないか。就いている職業(保育士)からも説明がつく。ただ、腹を痛める必要があるのかまでは、今の自分には理解し切れなかった。

主人公の場面ごとの深呼吸と沈痛な面持ち。まるで、ひとと議論した後の心の中のわだかまりをはき出しているかのよう。一方で、物語の頭の方で兄妹を捨てた母親を思い出しているシーンがあり、そこでも深呼吸が出ていたとを考えると、母親を思い出しているのかも知れない。どちらなのだろう。

主人公の妹。母親に捨てられた兄妹だと、普通の兄妹より深い繋がりなのだろう。それでも、お互いにお互いを想うあまりそれ以上は言えない、言わないラインがある。そんな気がした。自分にも妹がいるけど、あそこまで赤裸々に話をしたことがあろうか(いやない)。主人公の妹は、兄からの突然の衝撃の告白を聴いた後、どうやって気持ちの整理をつけたのだろうか。終盤のやり取りからすると、最終的に兄の気持ちを理解したのだと思う。完璧には同意しかねている様子ではあるが。兄妹ならではの信頼があるんだと思う。主人公の妹が大いに嫌う広島の意味。兄が内緒で行っただけで、激怒するくらい。兄妹を捨てた母親の消息が分からなくなった場所なのか、それとも家族で住んでいた場所なのか。母と兄妹の3人で宮島に参詣しているシーンがあったので、思い出深い場所だからこその忌避感なのだろうか。

主人公である兄が広島に行った意味を考えてみる。「決意」を実行するに際し、原点に戻ることで気持ちの整理をしたかったのだろう。しかし、きちんと原点に戻りきれたかまでは語られていなかった。想像の余地が大きいのは面白さを構成する重要なファクターだと思う。

ところで、主人公の兄妹だけでなく脇を固める登場人物も面白かった。まずは兄妹の母親。元々はショーパブの歌手。子供が出来たから辞めた。旦那に逃げられたためか、ふたりの子供を一人きりで育てていこうという強さが出ていた。しかし、初っ端のシーンでドアにガムテープを貼り子供を閉じ込めていた。どこでそうなったのだろう。弟が「意地を張っていないで実家に戻ってこい」と言いに来ても戻らないという堅い決意。台詞から両親との確執も推測されたが、この「意地」を張る原因となった状況をもう少し深掘りして欲しかったかな。

もう一人、保育園で働く保育士の一人も面白い。旦那と子供と3人家族らしい。最初は不思議系だと感じた。でも、旦那とうまくいっていないのだろうか、自分の子に対する愛情はあるけれども、一方でそうでない感情もあり、さらに虐待まがいのことをやったと、主人公の園長先生に告白。主人公はその保育士に「大丈夫、大丈夫」と何度も言う。主人公は、自身らを捨てた母親とその保育士が重なったのだろう。主人公が自身に言い聞かせているかのようだった。このシーンでは結構じわっと来た(目から汗がしたたり落ちてきた)。

と、ここまで書いてきたものの、脚本/演出の山下さんの言いたかったことがちゃんとくみ取れている気がしない。全然足りない気がする。そんな深い深い作品だった。月曜まで残り3回上演されるので、是非、見に行っていただきたい作品。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック